ゲーム理論は社会を分析する
切れ味鋭いツール。

経済学科 教授 川森 智彦

ゲーム理論は相互に依存した意思決定を分析する数理モデル。

 “モノ”の分け方を資源配分と言います。“モノ”には限りがありますが、一方で人は少しでも良い生活をしたいので、質的にも量的にもより満足いくものを求めます。欲望というのは限りないわけです。しかし“モノ”は限られています。そうした限られた“モノ”を、人々ができるだけ満足するように配分できるかを研究するのが経済学です。この経済学に「ゲーム的状況」の想定を加えた数理モデルをゲーム理論といいます。ゲーム的状況というのは、将棋やチェスのように対戦相手(自分以外に意思決定する者)がいて、その相手がどういう行動をするかによって、自分にとって最善な戦略が変わってくる状況のことです。

恋愛から外交問題までを語れる理論。

 ゲーム理論は恋愛から外交問題まで幅広い範囲で応用することができます。例えば、エスカレーターに乗る時、多くの地域では右側を空けて立ちます。あの行動もゲーム理論で説明できます。まわりの人の行動からどちらを空けるべきか判断をして立つ側を選んでいるのです。また、デートでどこに行くか、ということもゲーム理論で検討することができます。その他にも、最近日本でも導入された司法取引のもとで自白をするといった行動や、歴史的事件としてはキューバ危機の結末もゲーム理論で説明できます。当然、企業の意思決定の分析などにも積極的に使われています。ゲーム理論に限らず、経済学を身に付けるということは、複雑なことから本質を整理する能力と、その整理されたものから結論を導く論理性を養うということです。世の中が経済中心で動いている以上、それを実践的に理解するためにも経済学は重要です。