世界の動向や歴史にも目を向け、多くの人が幸せを実感できる働き方を模索しよう。

経済学科 助教 神野 圭介

AIの進化は大量失業の脅威か? それとも週休3日制の好機か?

 肉体労働だけでなくサービス・知識労働も機械に置き換わってゆく未来。多くの人が仕事を失う不安にかられています。しかし、より少ない人間労働でより多くを生産できるようになるということは、経済的な仕組みや制度的ルールを工夫すれば、より豊かでゆとりのある生き方を可能にするとは考えられないでしょうか。そもそも労働時間のルールは、多くの人々が仕事をシェアすることで大量失業の脅威を乗り越える、という人類の知恵だったのです。今あるシステムの中でうまく生き抜くためスキルや能力を磨くという努力も大事ですが、長期的視野でみんなが幸せに近づくための働き方やルールを考えていくことも重要だと思います。

私たちの働き方は私たちが決めること。だからこそ学んで深く考えてほしい。

 2019年日本で新たに導入された「高度プロフェッショナル制度」は、米国で定着しているホワイトカラー・エグゼンプションを模した制度です。働いた時間ではなく成果に対して賃金が支払われるという考えに基づき、どれだけ働いても残業の概念がありません。米国では今ではごく普通の労働者に適用されています。一方、フランスでは法定労働時間が週35時間です。ワークシェアリングの考えに基づき、正社員の標準労働時間の短縮を図りました。さらに高度な生活保障が貧困リスクを軽減しています。大事なのは、長いものに巻かれず一人ひとりが意見を持つこと。これからの日本の働き方は、私達がどう考えるかで大きく違ってきます。