経済学部ニュース
Interview
星野幸代氏 国際連合人間居住計画(ハビタット)福岡本部 本部長補佐官
■日 時:2018年10月1日(月)15:00〜
■場 所:アクロス福岡8F 国連ハビタット福岡本部
筒井流水(産業社会学科 2年)
星野幸代氏は、2004年より国連ハビタット福岡本部に勤務され、イラク担当専門官として同国の戦後復興事業に従事された後、現在は本部長補佐官として、アジア太平洋地域に加えて、アフリカでの環境技術協力事業(福岡方式の廃棄物埋立場整備に向けた技術移転)などに深く携わっておられます。このたびは大変ありがたいことに、世界ハビタット・デーのワークショップに先立ち、「国際協力の現場で培われたスタンス」や「プロジェクト運営に関して大切なこと」をうかがうことができ、さらには「私たち若い世代が、次の一歩を踏み出すにあたり」、貴重なヒントをいただいてまいりました。
■国際協力の現場で培われたスタンス
まずは、事業対象地域の「歴史、文化、価値観を深く理解すること」が基本。また、「ある意味、自分の“信念”や“軸”といったものには、こだわらないスタンスが重要」とも教わりました。昨今、ご自身は、これこそが“真”という思いよりも、むしろ視角が異なるとモノの見え方が違うことを胸に刻み、できる限り人々に「寄り添う」姿勢を大切になさっているそうです。
■プロジェクト運営に関して大切なこと
プロジェクトには、それぞれに異なる運営上の難しさがありますが、事業目標の達成とともに大事なのは事業後の「持続性」と強調されました。「住民参加」型の事業運営には、地域社会の多様な声−特に若い世代や女性の観点や考え−を丹念に汲み取り、安全・安心なまちづくりに反映してきたという「経験」の共有が極めて重要との強い思いが込められていました。さらに、そうして築かれた「人のつながり」は、災害からの復旧・復興においても鍵になるとも説いてくださいました。
なお、技術面に関しては、住民との対話を通じ、それぞれの対象地域の状況・条件、事業運営の持続的な維持管理・経営を勘案しながら、最適な技術を見極めていかれるそうです。また、人々の積極的な参加を促すには、設計にある程度の柔軟性も求められるようで、基本的なプランをもとに、各戸が自らのニーズに応じて付加していけるような工夫も大切と教わりました。
■私たち若い世代が、次の一歩を踏み出すにあたり
まずは、身のまわりの関心事項に関して、「日本以外でも類似した事象が生じている状況に注意を払い、世界的な視野から理解を深めること」とのアドバイスをいただきました。たとえば、気候変動に起因するとみられる大規模水害は、日本だけでなく、世界各地で頻発し、人々の生活を随所で揺るがしている“全体像”をつかんでおくことが大切とご教示くださいました。
また日本国内にあっては、少子高齢化に関わる諸問題への対応が急がれますが、その“切り抜け方”については、今後ますます多くの途上国からも注目されるようになるとの見立てに続けて、日本は「人工知能などの最先端技術による対処だけでなく、人間的な温かさに満ちた方策も合わせて発信できると良いですね」との期待も添えられました。
Workshop
世界ハビタット・デー 2018 ワークショップ
「Municipal Solid Waste Management −ごみ問題について私たちができること−」を受講して
■日 時:2018年10月1日(月)17:00〜
■場 所:アクロス福岡3F こくさいひろば
吉田朋泰(経済学科 3年)
2018年10月1日、「世界ハビタット・デー」に合わせて開催された国連ハビタット・(公財)福岡県国際交流センター主催「ハビタットひろば」では、都市の固形廃棄物管理をテーマにワークショップが行われました。
「開会: ごみ問題についての紹介」では、世界の約20億人が定期的なごみ回収サービスを受けられず、都市から排出されるごみの30~60%は収集されていない状況のもと、人々の健康や環境には深刻な影響が生じていることが提起されました。そして、地方自治体、学校、NGOs、企業など、さまざまなアクター間の連携した取り組みが求められていることを学びました。
このワークショップにおいては、持続可能な開発目標(SDGs)について、ゲーム形式で体感する「カードゲーム 2030SDGs」に取り組みました。その後、福岡をベースに活動する市民団体がこれまでに主導されてきた実践をベースに、「ごみ問題についての事例紹介・グループ・ディスカッション」が進められました。
■カードゲーム 2030SDGs
「SDGsの17の目標を達成するために、現在から2030年までの道のりを体験する」このゲームでは、「世界の経済・環境・社会の状況変化」を見ながら、さまざまな価値観を持った人々が「与えられたお金と時間を使って、プロジェクト活動を行い」、その結果として現れた「2030年の世界」を、ファシリテーターの方に導かれながら参加者全員で振り返りました。
参加者からは、「世界はつながっていることを実感」、「グローバル社会の全体を感じながら行動するなかで、私も起点に」、「自分の目標を伝える/相手の目標を聞くことが鍵」、「奪い合えば足りず、分け合えば余る」などの示唆に富む感想・意見があがりました。確かに、私自身も、ゲームを通じてそのように実感しました。「ハビタットひろば」に集われる方々は、ご所属・世代において多様で、いろいろな対話・交渉の仕方を感得する良い機会となりました。
■ごみ問題についての事例紹介・グループ・ディスカッション
特別非営利活動法人「循環生活研究所」が推進されている、自分たちの暮らす近隣生活圏(半径2km)をベースに循環型社会を構想する取り組み、「ローカル・フード・サイクリング」を、学ばせていただきました。これは、家庭から出る生ごみを焼却処分するのではなく、「ダンボール・コンポスト」で堆肥に変え、菜園の「土づくり」に活かし、そこで育てた有機野菜を食卓へという試みです。近年は、若い世代が集住する新しい住宅地区にも導入され、活動に大きな進展が見られるとのことでした。当事業は、二酸化炭素の削減にもつながります。また「土づくり」は「人づくり」に結びつき、そうした人々が暮らす地域社会は、さまざまな課題を自律的に解決し得るとの展望に、「地球的規模で考え、足元から行動する」という言葉を思い起こしました。
私は、このところ「食品ロス」の問題に関心を持ち、映像作品の制作に取り組んできましたが、本事例紹介ならびに討議内容にも大いに触発されました。
(担当: 谷村光浩)