学部長・学科長メッセージ

産業社会学科 学科長 杉本 大三


オープンキャンパスで本学を訪れた高校生から、産業社会学科と経済学科の違いについて尋ねられることがあります。確かに2つの学科はよく似ています。例えば受講可能な講義科目はほぼ同じです。したがって様々な講義を、両学科の学生が同じ教室で受講します。1年生向けの基礎ゼミや、それ以上の学年に配当されている専門ゼミについても、学科の区別はありません。同じ教員のゼミを2つの学科の学生が同じ教室で受講しています。

 

では違いは何なのかというと、卒業に必要な単位の部門別構成です。最も大きな違いは、フィールドワーク・実習部門で、産業社会学科の学生はこの部門の科目を経済学部の学生よりも多く履修しなければなりません。フィールドワーク・実習部門には、社会フィールドワークや国際フィールドワークなど、調査や研究を行う実習科目が多く含まれます。これらの科目では、教員の作成した研究計画の枠組みを踏まえながら、可能な限り学生が主体となって、調査対象の設定、調査対象についての学習、実地調査、調査結果の取りまとめなどを行います。2022年度の社会フィールドワークでは、太平洋戦争時の愛知空襲と当時の工業の発展に関する研究、脱炭素社会の実現と地域経済に関する研究、労働関係諸機関でのヒヤリング調査に基づく働き方動向の研究、城下町の経済的分析と活性化策の立案、などが取り組まれました。

 

では調査・研究系の科目を多く履修する目的は何なのでしょうか。産業社会学科の学位授与方針には、「①体験型・実践型の科目を豊富に含む②経済学研究の過程を通じて」、「現代社会に活力を与えられる③自立した人間」を「養成」すると述べられています(番号と下線は筆者)。「①体験型・実践型の科目」がフィールドワーク実習部門の科目を指していることはもうお分かりですね。次の「②経済学研究の過程を通じて」とは先人の教えをただ学び、暗記するのではなく、自ら研究課題を発見し、その課題を研究することを通じて、という意味です。そしてそのようにして学生は「③自立した人間」、すなわち他人や社会の雰囲気に左右されず、自分の頭脳で様々なことを考えて果断に行動する人間へと成長していきます。産業社会学科の学生は、調査・研究系の科目を多く履修することを通じて、自立した人間となることが期待されるわけです。ちなみに、経済学科の学生は、理論・歴史・政策の研究過程を通じて自立した人間となることが期待されています。

 

ところで、産業社会学科の学生が経済学科の学生よりも格段にたくさんのフィールドワーク・実習部門の科目を履修するわけではありません。大まかに言って、経済学科の学生が4年間でフィールドワークを1回履修するのに対して、産業社会学科の学生は2回履修します。どうでしょうか。結局のところ、2つの学科には形式上、大きな違いはないのです。

しかし違いが小さいとも言い切れません。以上のことをよく理解し、目的意識をもって受講した2回のフィールドワークは、生涯を通じて財産となるはずです。結局のところ、産業社会学科ならではの学びを達成できるかどうかは、学生の皆さんの学ぶ姿勢によります。もちろん、教職員はそのための支援を惜しみません。