経済学部ニュース
「スリランカにおける紛争後の再建事業」受講報告
河合将樹(経済学部経済学科4年)
2018年6月1日、国連ハビタット(UN-Habitat)・福岡県国際交流センターが主催される講演会に参加しました。2013〜2017年の5年間にわたり、スリランカでの紛争後のコミュニティ再建事業をPeople’s Process(住民参加の手法)をベースに率いられた松尾敬子氏より、当該事業の概要や成果をうかがいました。この事業は、250あまりの村々を対象に、村道、教育施設等のコミュニティ・インフラの再建を進め、36万人の生活改善を達成しています。
国連ハビタットのねらいは住民の「自立」であり、その国や地域の人々が主役となる「まちづくり」を持続的に行えるような支援です。People‘s Processにもとづく再建事業をきっかけに、コミュニティの団結力が高まり、国連スタッフの方々が離れた後も改善にむけた取り組みが継続的になされるように、現地の「人」の育成、現地の方々がリーダーシップを発揮しうる環境づくりに注力されてきたとのご講話は、大変勉強になりました。
具体的には、学校建設という「ハード」面だけではなく、建設後の運営も視野に、予算管理や教員育成、職業訓練などの「ソフト」面にも注力されました。その「ハード」に関しても、教員宿舎を併設することで、教員の居住環境を改善し、特に女性教員が安心して学校で活躍できるようにする工夫はとても印象的でした。関係者がともに作業することを通じて心を通わせ、人々が自ら歩む力を育む手法には、持続可能な社会を築く上でのヒントがあるように感じました。
「現地の方々との信頼関係を、どのように構築されましたか」とおうかがいしたところ、「毎日会話すること」が一番大切だったと仰っていました。日々の対話を通じて、徐々に信頼関係を築き、最終的には家族や生活の相談も受けるような間柄になったそうです。世界は実に広く多様ですが、たがいに心を開いてやりとりをすることが基本とのお話はとても感慨深く、私自身の今後の活動においても重要なポイントとなりました。
「スリランカにおける紛争後の再建事業」受講報告
筒井流水(経済学部産業社会学科2年)
松尾敬子氏のご講話は、事業紹介映像から始まりました。住民参加の手法とされるPeople’s Processは、計画段階や建設中はもとより、建設後の維持管理に至るまで、全過程で用いられていました。具体的には、まず村人を一軒ずつ訪ね、事業計画に関する会議への出席を促しますが、地域リーダーのみならず、女性や障がいを持つ人など、すべての住民が平等にコミュニティの再構築に参加する機会づくりが重要とうかがいました。村人と国連スタッフが顔を合わせ、「今後の定住、そしてさらなる発展のために、次世代に向けてどのような施設が必要か」、「その建設にあたり住民自身ができることは何か」と、語り合う場が設けられていました。
また、プロジェクトの計画から完成までの各段階では、事業実施状況のモニタリングや事業費の管理、職業訓練など細かなところまで、すべてを住民自身が行えるような工夫がなされていました。自らの意思で決定および実施できるようなプロジェクトの運営環境においては、オーナーシップが育まれ、コミュニティの「団結力」も強まります。さらに国連は、事業終了後も視野に、村人と教育省などの関係機関が協議する場も整えていました。こうした進め方が、まさに住民参加を軸にすえた手法なのだと学びました。
私は、東日本大震災の復興支援ボランティアに関わっています。この活動では、学生の有志を募り、夜行バスにて名古屋から宮城県の大島という離島へ向かい、震災当初から瓦礫撤去、小学生との野球教室、漁業・農業のお手伝いを通して島民の方々との交流を深めてきました。実際のところ、私たちの場合は、“ボランティア”と言っても、島民のみなさまに教わることばかりでした。今回のご講演を拝聴させていただきながら、改めて事業運営には相当な工夫が求められることに気づかせていただく機会となりました。
最後に、「人のことはわからないからこそ、顔と顔を合わせて話し合うべき」との松尾敬子氏の言葉が胸に響きました。5年間にわたる事業において、住民一人ひとりに向き合い、たゆまぬ情熱を注ぎ続けてこられた松尾氏には、心からの敬意を表します。