経済学部ニュース

●2019年10月7日「世界ハビタット・デー 2019」報告: Interview


Interview 
熊谷有美氏

国際連合人間居住計画(ハビタット)福岡本部 広報担当官

■日 時:2019年10月7日(月)13:30〜

■場 所:アクロス福岡8階


大谷遥香(経済学科3年)

榊原えれ奈(産業社会学科2年)

毎年10月の第一月曜日は「世界ハビタット・デー」。都市や居住環境に関わる諸課題への理解を深め、それらの解決に向けた道筋を探る取り組みが世界的に展開されています。

国連ハビタット福岡本部では、毎年この時期に、アジア太平洋地域の小学校高学年を対象とする「世界ハビタット・デー記念絵画コンクール」が開催され、今年で19回を数えます。このたび、この絵画コンクールを発案され、初回から企画・運営に当たられている国連ハビタット広報担当官・熊谷有美氏に、作品を1点ずつ手に取りながらお話をうかがうことができ、さらには「広報」という活動について貴重な示唆をいただいてまいりました。

■絵は子どもからの「まちづくり」レポート

国連ハビタットに2001年3月に着任された熊谷氏は、同年秋の「世界ハビタット・デー」にむけ、この「絵画コンクール」を立案されました。未来を築く子どもたちには、それぞれの暮らしの場から「まち」を考え、絵を描くなかで「より良い社会」のありようを探るチャレンジを試みてもらうこと、さらには集まった作品から、子どもたちがともに学ぶことに加え、大人との対話も促されることなど、本事業の立ち上げ時からの思いをご教示くださいました。私たちも、作品を一点一点拝見しながら、応募された方々の「メッセージ」を糸口に、いつしかアイデアのやり取りに心を弾ませていました。これらは、まさに子どもからの「まちづくり」レポートです。

 

■インフォーマル居住地に暮らす子どもにもチャンスを

日本語版の「作品募集要項」には、所属の学校を通じた応募上の手順が記されていますが、途上国などで学校に通えない子どもには、地域コミュニティや国連ハビタットの現地スタッフの方々を通じた提出ルートが確保されています。また、コンクール後には、入賞作品が各月を飾るカレンダーが配布されます。そうした事業のスキームをうかがい、いずれの子どもも「誰も置き去りにしない」ことはもとより、誰もが胸を張って生きていける社会が目指されていることを実感しました。これまでの作品のなかには、「まち」の絵の一部に、「まちづくり」を話し合う人々の場面が組み込まれた絵画もあり、次代を担う子どもが、参加型事業運営を大切に思っていることが推察できました。

 

■「広報」とは、対話が自然になされるような場をつくること

熊谷氏は、このプロジェクトの企画・運営にあたり、地元の方々を含め、国内外の関係機関と緊密な調整を図られています。私たちがこれから社会に踏み出すにあたり、ステークホルダーとの「コミュニケーション」の取り方なども、おうかがいしたいと考えていましたが、手もとに準備したメモ書きを忘れるほど、会話の弾む楽しい時間を与えていただきました。最後に、「広報」とは、何かの要点を手際よく伝えるということよりも、子どもも含め、広く関心を寄せてくださる人たちが、そうした要点を自ら感じ取れ、語り合えるような場を整えることではないかと感じました。


(担当: 谷村光浩)