経済学部ニュース
ハビタットひろば 「福岡の企業技術でケニアの難民居住区に安定した水を!」-砕石投入状況- 右上: 国連ハビタット福岡本部本部長補佐官 星野幸代氏 右中: (株)大建 代表取締役 松尾憲親氏[右]、プロジェクトリーダー 河野新司氏[左] |
2020年12月1日、国連ハビタット(UN-HABITAT)・福岡県国際交流センター主催のオンライン講演会に参加しました。国連ハビタットは、ケニア・トルカナ県カロベイエイ新居住区にて「持続可能な開発事業を通じた難民と受け入れコミュニティの統合強化事業」を展開されています。今回は、本プロジェクトにおいて「雨水を地下に貯水する施設」の整備を主導されたナイロビ本部の寺田裕佳氏、福岡本部の星野幸代氏、そして技術的な支援に当られた株式会社大建(本社: 福岡市)の松尾憲親氏・河野新司氏より、その住民参加型共同事業の概要をうかがいました。
■「安全な水を手に入れる」事業をひとつの起点に
成瀬瑠里子 (経済学科2年)
国連ハビタット福岡本部と同じ福岡市に拠点をおく(株)大建は、地下に設けた砕石層に雨水を貯水する「ためとっと」という工法を培われてきました。「短期間の簡単な工事で、大量の雨水を、わずかなメンテナンスのみで飲料水並みの水質で貯水し、使用できる」仕組みになっています。2012年、「アジアの都市連携による環境技術専門家会議」(国連ハビタット主催)にて、その手法をプレゼンテーションされ、2014年からは国連ハビタットとの連携事業として、ラオス、ベトナム、そしてケニアのまちで、水の供給-いずれも100tをこえる貯水施設づくり-に尽力されています。
国連ハビタットが「ためとっと」を採用された理由は、(1)工事費が安価で、(2)工事期間が短く、(3)材料は現地で入手でき、(4)特別な施工能力が不要で、現地の方々で工事を進められ、(5)施工後の管理も簡易という5点とうかがいました。今回のケニアでのプロジェクトでは、(株)大建の方々は、現地にて4日間、施工上の技術指導にあたられ、工事を完了されたそうです。
「ためとっと」の作り方は、確かにとてもシンプルでした。まず、設置予定の場所-底面9m×14m、深さ2m程度-を事前に掘削。次に、貯水に不可欠な遮水シート(現地調達)の接合作業が、丁寧に進められます。掘削した場所にこの遮水シートが敷かれた後、砕石が投入されます。この砕石投入時には、遮水シートを傷つけないように、すべて人力で行われたそうです。そして、集水管を取付け、最後に砕石層の上部に埋戻土をかぶせて作業完了となります。
ケニアでの施工にあたり、思うように資材がそろわないなかで、(株)大建の方々は、事業後の持続的な発展を視野に、現場で「できることを考えながらの作業はいい経験になりました」とお話しされていました。国際協力の現場とは、まさに学び合いの場でもあると強く感じました。また、国連ハビタット福岡本部の星野幸代氏は、「この住民参加型プロジェクトは、水の供給といったことだけではなく、それまで水を手に入れるために多くの時間を費やしてきた女性や子どもの労苦を軽減し、教育などの機会の実質的な確保につながるもの」と補説くださいました。ひとつの事業が、主たる問題の解決だけでなく、副次的に他の根深い課題の解決にむけた一歩となり得るという示唆も大変印象深く、大いに学ばせていただきました。
【大学ウェブサイト 関連リンク】
名城大学 学びのコミュニティ(2020年度)
E=mc2 for SDGs(Empowerment = movie×creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs)のための人づくり
(担当: 谷村光浩)