経済学部ニュース

経済学部太田専門ゼミⅠ・Ⅱでは、株式会社アクアリング様をお招きし、「人間中心設計(Human Centered Design:HCD)」をテーマとしたワークショップを実施しました。
アクアリング様は、企業のWebサイトやデジタルサービス、ブランディングなどを手掛けるクリエイティブ企業です。当日は、実際のプロジェクトでも活用されているHCDの考え方についてご講義いただくとともに、学生自身がそのプロセスを体験する実践型ワークショップを行いました。
まず、人間中心設計の基本的な考え方や、「調査」「定義」「設計」「評価」を繰り返しながら価値を高めていくHCDサイクルについて説明を受けました。その後、「旅行をより良いものにするサービス」をテーマに、利用者像(ペルソナ)を起点としたグループワークに取り組みました。学生は、提示されたペルソナの性格や価値観、行動特性を分析し、表面的な要望だけではなく、その背景にある課題やニーズを整理した上で、新たなサービスやアプリの企画を検討しました。
各グループの発表後には、アクアリング様から実務の視点に基づく講評が行われ、既存サービスとの差別化や、本当に利用者にとって価値のある機能とは何かという観点から具体的なフィードバックをいただきました。学生たちは、自分たちのアイデアを客観的に見直すことで、企画は一度で完成するものではなく、利用者の視点に立ちながら改善を繰り返すことの重要性を実感しました。
今回のワークショップは、単に商品やサービスの企画手法を学ぶだけではなく、「つくりたいもの」ではなく「利用する人」を起点に発想する姿勢や、多様な意見を取り入れながら課題を整理し、新たな価値を創出するプロセスを体験する貴重な機会となりました。AIの活用が急速に進む社会においても、人を深く理解し、本質的な課題を発見する力や、多様な視点を統合して新たな価値を生み出す力はますます重要になります。今回の実践を通じて得られた経験は、今後のゼミ活動や卒業研究はもちろん、社会で求められる課題解決力や協働力を養う上でも大きな学びとなりました。
以下、ワークを終えたゼミ生からのコメント抜粋です。
■AQUARING様とのワークを通して学んだHCDとAI活用
中谷 敬心(経済学科2年)
2026年現在、様々な仕事がAIに代替されつつあります。私たち経済学部生の就職先として花形であった金融業でさえ、将来的にはAIに置き換えられるといわれています。このような状況の中で、人間ならではの強みを活かしながら現代社会を生き抜くには、どのようにすればよいのでしょうか。そこで、アプリ開発やWEBサイト制作を行っている企業であるAQUARING様をお招きし、特別講義をしていただきました。本稿では、講義の中で学んだことや、その感想について述べていきます。
まず、「HCD」という考え方を教えていただきました。これは、自分がやりたいことではなく、実際にそのデザインを利用する人を中心に考えて開発を進める手法です。この考え方を念頭に置き、計画の立案が苦手な人が旅行の際に使えるアプリを作ることを目標にグループワークを進め、アイデアを出し合いました。しかし、グループ内で出た意見をすべて活かそうとした結果、完成した案は「旅行のどのタイミングで使うのか」という立ち位置が不明瞭であると指摘されました。HCDを意識していても議論が自然と脱線してしまい、設計の難しさを痛感しました。
そこで活用できるのがAIです。煮詰まった議論をAIで要約することで、議論を進めるきっかけを得ることができます。実際にグループワーク中も、第三者視点からまとめた意見が欲しい場面が何度かあったため、このような場面ではAIは非常に有用であると感じました。
今やAIは身近な存在となりました。しかし、本質を見極める力や共感力は人間にしか備わっていません。人間ならではの強みを活かしつつ、AIを賢く使っていくことが現代社会で求められる能力であると、今回の講義を通して改めて実感しました。
■『正解』を探し続ける商品開発
増田 奨真(産業社会学科2年)
商品開発の難しさを振り返ると、それは単なる「大変だった」という一言では片付けられないものだと感じました。最初に直面したのは、ユーザーが本当に求めている価値をつかむことの難しさです。ユーザー自身が自覚していないニーズや、言語化されていない不満を読み取るためには、表面的なデータだけでは不十分であり、仮説を立てて検証し、さらに修正するというサイクルを繰り返す必要がありました。その過程で、ユーザー理解の奥深さと難しさを強く実感しました。
さらに、アイデアを形にしていく段階では、自分の中にある思い込みや先入観がしばしば障害となりました。自分の価値観とユーザーの価値観のズレを受け入れ、柔軟に方向転換することの重要性を学びました。
また、商品開発は決して一人で完結するものではなく、チームで進めるからこその難しさもありました。異なる価値観を持つメンバーが集まることで視点は広がる一方、優先順位や判断基準の違いから意見がぶつかる場面も多くありました。しかし、最終的にはその対話の積み重ねが商品の完成度を高めていくのだと実感しました。
こうして振り返ると、商品開発は「正解のない問いに挑み続けるプロセス」であったように思います。思い通りに進まないことがあっても、その一つ一つが学びであり、正解へ近づく道であると教わりました。難しさはありましたが、それ以上に成長を実感できる貴重な経験でした。
■人間中心設計(HCD)の体験ワークから得た気づきと、自発的な探究心がもたらす課題解決の視点
山田 愛花(経済学科3年)
株式会社アクアリング様によるHCDのワークを通して、プロジェクトにおけるユーザー視点の重要性と、それを形にするまでの過程について学ぶことができました。具体的には、ペルソナ(製品やサービスの象徴的なユーザー像を具体的に書き出した架空モデル)を分析し、企画・調査・定義・設計・評価へと進む一連の流れを体験しました。その中で、私たちが考えた企画には固定観念や都合の良い解釈が含まれていることに気づかされました。また、グループワークでは自分にはない視点からの意見に触れることができ、大きな刺激となりました。
一度で完璧なものを目指すのではなく、評価を基に前段階へ戻り、ブラッシュアップを繰り返すというHCDの本質の一部を体感し、株式会社アクアリング様が普段からこの手法を用いて顧客やユーザーの課題を解決されていることの凄さを感じました。
実際の現場で活用されている手法を体験したことで、自発的に探究する姿勢の重要性を強く実感できた有意義な時間でした。ここで得たサイクルを反復して考えを深めることや、他者の視点を取り入れて柔軟にブラッシュアップしていく姿勢は、将来だけでなくゼミナール活動や講義内のグループワーク、部活動など、あらゆる場面で必要不可欠です。物事を多角的に捉え、課題の解決策を導き出すためのひとつの手段として、今後の活動に活かしていきたいと感じました。
(担当: 太田志乃)