2011年度 社会フィールドワーク『語り継ぐ私の戦争体験』を読む教授 渋井康弘
今年は、名東区にある平和ミュージアム「ピースあいち」の語り手の会が編集した『語り継ぐ私の戦争体験』を輪読し、愛知空襲を追体験するフィールドワークを実施しました。自分たちの祖父母や曽祖父母にあたる年齢の方々による戦争体験の証言集は、学生にとって遥かかなたのものでしかなかった第二次世界大戦を、具体的に想像できる出来事に変えてくれました。特に愛知空襲に関する証言を読んだ後は、戦争をぐっと身近なものとして感じられるようになったようです。
輪読を行う一方で、教室を出て空襲の跡を辿るということもしました。「ピースあいち」見学の他に、名古屋空襲の時に犠牲者のご遺体が積み上げられていた霊光院(上飯田)を訪問し、和尚さんに当時のお話を伺ったり、勤労動員で働いていた多くの生徒・学生が空襲の犠牲となった愛知時計電機(株)を訪れ、機銃掃射の跡の残る外壁を見たり、戦没者の残した手記・手紙などを朗読する緑風の会(南山国際高校の馬場豊先生指導)にお出で頂いたりと、今も町に残る戦争の傷跡を巡りながら、多くの方々のお話を伺いました
最終授業では、本学学務センターの大脇部長にお話頂きました。大脇さんのお母様は、勤労動員で愛知時計電機に勤務していましたが、ある朝お祖母様から「今日は休みなさい」と言われ、出勤しなかったそうです。その日に熱田空襲があり、工場は大変な被害にあいました。お祖母様の不思議な一言が、お母様の命を守ったわけです。そのお母様の子どもが今、学務センターにいる——学生たちはあの戦争と自分たちとのつながりを実感したことでしょう。
最終レポートを作成する際には、多くの学生が自分の家族や親戚から戦争体験を聞いていました。中には「そんなつらい話はしたくない」と叱られた学生もいたようですが、彼等は「話したくない気持ちもわかる」と、相手の気持ちをおもんばかっていました。この授業が学生と家族とのより深いコミュニケーションのきっかけになってくれれば、こんなに嬉しいことはありません。