自らが生産するものと発想を転換すれば、地域はエネルギーの宝庫に見える。 産業社会学科 教授 井内 尚樹 |
ドイツの地域経済活性化モデルに学ぶ必要性!
現在、ドイツは小規模分散・分権・ネットワーク型の経済構造へと舵を切り、新しい経済モデルを構築する過程にあります。そのきっかけとなったのが、エネルギーを「自らが生産する」という考え方でした。エネルギーは大規模一極集中型で「供給されるもの」という概念を見直し、地産地消していく小規模分散型のエネルギーシステムに切り替えたのです。地域資源である太陽光・熱、風力、水落差、地中熱などのほか、家畜の排せつ物や都市の生ごみから得られるメタンガスを利用して、地域で電力・熱エネルギーを生産する。一極集中型の大量生産・大量消費・大量処理の発想を転換して地域を見ると、いままで利活用していないものがエネルギー資源に転換したのです。こうしたローカルエネルギーの活用は地域の基盤的産業となり、地域経済を発展させます。
発想の転換を図ることで、「脱炭素」社会の循環型社会が誕生する可能性も
私たちは普段何気なく電気やガスを使っていますが、その元となる化石燃料はいつか枯渇するため、使わないあるいは節約して使う方法を考える必要があります。一方、上記のような化石燃料に頼らず、地域資源を活用した社会はCO2の排出を非常に少なく出来ます。「供給されるものからつくるものへ」という発想の転換は、社会、地域、雇用、モノづくり、ライフスタイルなど、あらゆるものを変えていき、その先には「脱炭素」の循環型社会が待っています。現在の日本は、パリ協定参加国の多くが拒否している高効率石炭火力発電所の建設という「低炭素」社会に進むのか、それとも「脱炭素」社会に向かうのかの岐路に立たされています。