経済構造や企業経営の点から両者を比較する必要があります。多額の初期投資も不可欠だからです。

経済学科 准教授 名和 洋人

再生可能エネルギーの普及には、政府による継続的な支援が必要です。

 石油や天然ガスなどの化石燃料はCO2排出など環境への負荷が大きく、また資源に限りがあるとされるため、世界で削減の動きが見られています。これに代わるエネルギーとして期待を集めているのが太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーです。一層普及してほしいと願っていると思いますが、その転換には相当の時間とコストがかかります。発電施設などに多額の初期投資を必要とするほか、電力の安定供給などの面でさらなる技術発展も求められています。すなわち、こうした領域への各国政府による財政支援が切望されています。化石燃料は急激な価格変動も生じ易く、ランニングコストの点でネックをかかえていますが、その転換に際しては再生可能エネルギー側の問題も考えなければならないのです。

アメリカ経済の歴史から現在の環境問題解決への糸口を探る。

 このような問題は現代のものと思われがちですが、実はアメリカは100年ほど前に類似の問題に取り組みました。当時、安価な火力発電が広がるなかでも、政府は水力発電を拡大すべく莫大な初期投資で水資源開発、つまりダム建設を進めました。第1次大戦期の化石燃料不足のなかで火力偏重の電源構成では対応できなかったため、1920〜30年代に対策をとったと言えます。私はアメリカ経済史を研究し、現代の問題解決の糸口を探ろうとしています。またこうした水資源開発の研究は、河川などから農地へ人工的に給水する灌漑用水供給事業にも広がり、農業や農業政策、肥料開発などを広く研究しています。現代農業は大量のエネルギー消費を伴いますので、両者を並行して研究することは新たな知見を得るうえで有益です。