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「戦略的転換点」を見極めることで、時代の波に乗り遅れないように戦略を立てる。 産業社会学科 教授 西山 賢一 |
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組織の成功の鍵は、いかにはやく戦略的転換点に気づき、舵を切ることができるか。
19世紀の産業革命や、インターネットの登場による情報化社会の到来。人類はこれまで、今までの常識が根底から覆るような大きな節目をいくつも経験してきました。このような節目は「戦略的転換点」と呼ばれています。それぞれの戦略的転換点がおよぼす影響の大小などはさまざまですが、企業や自治体などの組織は、この戦略的転換点にいかに早く気づき、舵を切ることができるかが重要です。たとえば、iPhoneの登場により、一気に普及していったスマートフォン。それまでの日本製の携帯機種が「ガラケー(ガラパゴス化したケータイ)」と呼ばれるようになったことからもわかるように、日本の携帯電話メーカーにとって、iPhoneの登場は、大きな戦略的転換点であったことは間違いありません。この転換点をいちはやく意識して、これまでのガラケーに固執せず、スマートフォン開発に着手できたかが、携帯電話メーカーの生き残りを大きく左右したはずです。
戦略的転換点を見極めるため、世界の動向に目を向ける。
現在の戦略的転換点として、私は「脱炭素」「AI(人工知能)」「ブロックチェーン」の3つに着目しています。「脱炭素」については、2015年、約200カ国が参加する国際会議で採択されたパリ協定が大きな転換点。「地球温暖化対策として、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく」というこの協定を受け、世界の企業や自治体が、脱炭素に向けての取り組みを一気に加速させています。さらに、脱炭素をかかげる企業は、金融機関や投資家から優遇され、100%再生可能エネルギーを利用している企業としか取引しない企業が現れるなど、世界はすでにそこまで舵を切っています。その他の2つについても見過ごせません。AIの登場は、これまで人がしていた仕事をAIが変わりに行う社会を、仮想通貨の取引管理に利用されている「ブロックチェーン技術」は、金融はもちろん、あらゆる取引のあり方を大きく変える未来を予見させます。「戦略的転換点」を見極めるためには、このように世界の動向にアンテナをはって、あらゆることに目を向けることが重要です。