歴史を学ぶと、現在の経済問題を
考える上でのヒントが得られる

経済学科 准教授 大瀧 真俊

資本主義というシステムが抱える問題とは。 今の日本経済は、所得格差、雇用不安、財政赤字、少子高齢化など、あげればキリがないほど多くの問題に直面しています。ではこれらの問題を考える上で、歴史を学ぶ意義はどこにあるのでしょうか。たとえば皆さんもよく耳にする資本主義。この経済システムについては、18世紀に登場した当初から今と同様、格差を生み出すことが懸念されていました。それに対抗するシステムとして登場したのが社会主義であり、20世紀後半にはこの2つによって世界が二分されるに至ります。冷戦と呼ばれた時代のことです。その後、社会主義体制の崩壊によって世界は資本主義一色となりましたが、先に示した資本主義の欠点が解消されたわけではありません。それどころか、最近では所得格差がグローバルな規模で拡がりつつあるのです。

歴史から未来を見通す力を身に付けよう。 こうした紆余曲折が示すように、資本主義という経済システムは必ずしも万能なものではありません。では資本主義をより良くするためには、一体何が必要なのでしょうか。それを考える上で重要なのが、歴史という視点です。たとえば私の専門は近代日本経済史、なかでも戦時下の軍馬について研究しています。当時の軍馬は飼料や休息を十分に与えられず、次々と使い捨てにされていました。この生き物をモノとして扱う考え方、難しく言えば「資源論」という考え方には、近年の非正規雇用の問題とつながるところがあります。このように歴史の中には、今の経済問題を考えるためのヒントが数多く埋もれています。今は将来の見通しが立たない時代だからこそ、目先の問題だけにとらわれず、歴史という長いタイムスパンで物事を考えることが必要といえます。