“ものづくり愛知”は2つの産業構造を
持ち、連携・補完しながら発展

産業社会学科 教授 渋井 康弘

他に類を見ない「合体型」構造。

 愛知県は製造品出荷額38年連続全国1位であり、言わずと知れた“ものづくりの町”。製造業の中でも代表的なのは、ご存知の通り、自動車をはじめとする輸送機械です。ところが、輸送機械の比重が高いのは三河地域に限られたこと。西側の尾張地域を見てみると、電子機器、繊維機器、厨房機器、遊戯機など多種多様な機械が製造され、輸送機械を大きく上回ります。この全く異なる産業構造が隣り合わせに存在し、相互に強みを活かして弱いところを補い合っていることが、他を寄せ付けない強さの理由。全国でもこのような例は見られません。たとえば自動車開発にあたり、新しいシステムや部品を試作する際に活躍するのが尾張の職人たち。培ってきた手技や段取り力などを活かして臨機応変に対応することで、三河に貢献しています。

ものづくり愛知の奥深い歴史。

 江戸時代、三白木綿や知多木綿など繊維産業が盛んになり、さらに木曽川を通じて名古屋に木材が送り込まれたことで木工技術が発達。また尾張徳川家の城下町として栄えた当地には、からくり師など多くの職人が集い独自の発展を遂げていきました。その“技”が軍事に使われ、第二次世界大戦時は軍需産業のメッカとなったことも。今の“ものづくり愛知”があるのは、“武器づくり”から“ものづくり”へと転換を図った戦後の人々の並々ならぬ努力の賜物。こうした歴史を知ると、ものづくり愛知の奥深さがより感じられると思います。