社会全体のメリットを考えて、
公共サービスが整備されている。

経済学科 准教授 焼田 紗

国や地方自治体などが提供する、公共サービスが必要な理由は?

 たとえば公立学校による義務教育には「経済状況にかかわらずすべての人が教育を受けることができる」という実際に教育を受ける人にとってのメリットだけでなく、「だれもが一定の教育を受けた社会にすることで、さまざまな取り引きがスムーズに進む」など、社会全体にもメリットがあります。世の中の経済活動には、義務教育のように、市場を介さずに当事者以外にも影響を及ぼすモノやサービスがあります。このような場合、市場の自由な取引にまかせると、その供給量は社会的に最適とされる供給量を下回る可能性があります。そのため、国や地方自治体がそれらのモノやサービスを供給したり、補助金を出したりしているのです。

少子高齢化対策について、「公共経済学」の観点から効果や影響を分析。

 現在、日本では少子高齢化が社会の大きな課題となっています。少子高齢化は、社会保障制度や日本の労働力人口の減少など、社会全体に関わる問題です。そのため、たとえば「保育サービスを充実させる」ことで、少子化対策につながるのであれば、それは子どものいる家庭だけでなく、社会全体にメリットのある事業であると考えることができます。私は、「公共経済学」の観点から少子化対策について研究しています。公共経済学とは、国や地方自治体などの公共部門が行う経済活動を、経済学の側面から分析する学問です。さまざまな少子化対策の効果や影響が明らかにできれば、政策の検討にも役立つはずです。