日本の子どもの6人に1人が、
貧困状態という衝撃。

産業社会学科 准教授 山田 浩貴

格差が広がりつつある日本。今こそ、新しいアイディアが必要。

 2014年7月に厚生労働省が発表した「平成25年 国民生活基礎調査」によると、日本の「子どもの貧困率(17歳以下)は、16.3%。実に6人に1人の子どもが貧困状態にあり、しかもこの割合は年々増加しています。その背景にあるのが、経済。日本は、過去の成功体験と国や団体などがすでに得ている権能や利益に縛られて、成熟社会にふさわしい豊かな経済を築くことができないでいます。例えば国民皆保険や国民年金。30年前には素晴らしい制度でしたが、医療や年金を過去のシステムのまま継続し、支出が増えるから国民の負担を増やします、と言われてもどだい無理な話。日本では、今の経済に合った新しいアイディアに基づく社会保障システムを取り入れることが求められています。

海外の事例に学んで、新しい社会をデザインする。

 福祉の先進国といわれる北欧では、税負担率が高く、企業間競争が厳しく、しかも雇用も流動的です。しかしその一方で、子どもや65歳以上の老齢者の生活は、国が責任を持って保障しています。また女性の社会参画率が高い、失業者に対する手当てが厚いなど、社会全体が非常にアクティブです。こうした北欧のシステムを日本で実践することには賛否両論ありますが、どちらにしても今の日本には、税制改正や社会保障改革、女性の社会進出を支え、子育てを支援するなど、さまざまな改革が必要です。私の研究室がめざしているのは、経済学という切り口から豊かな生活の実現に貢献すること。危機的状況の今だからこそ、新しい社会のグランドデザインを学生のみなさんと一緒に考えています。