学部長・学科長メッセージ

経済学科 学科長 折原 卓美


新入生を迎えるたびに、自分の学生時代のことを思い出します。慣れない環境の中で少々不安を感じながら、難解な分厚いテキストを手に取りあたふたと大教室に駆け込んでいった、そんな記憶が今でも鮮明によみがえってきます。新入生のみなさんもおそらく同じような気持ちでいるのではないでしょうか。また経済学を勉強しようと思って入学してみたものの、授業時間割を見て、あまりにたくさんの経済関連科目があり、またそれが一体どのようなことを学ぶものか皆目見当もつかないといった気持ちでいる学生もたくさんいると思います。そこでこの場を借りて、ピーアールも兼ねて私の講義科目である経済史総論や西洋経済史についてお話をしたいと思います。

経済史というとどのようなことを学ぶものなのかなかなかイメージのわきにくい科目かもしれません。ごく簡単に言うと、さまざまな歴史的出来事についてその経済的意味を探る学問と言ってもよいかもしれません。その意味で経済史は歴史学の一分野ということができます。今日、経済学に関する多くの学問が膨大なデータの分析や理論モデルを構築し、現在進行形の諸問題を解決すべく日々研鑽を積んでいるのに対して、過去の出来事に焦点をあて、その歴史的経済的意味を探る経済史といった学問は、いささか牧歌的であるように思われるかもしれません。

しかし、21世紀の今日にいたっても、歴史を振り返りそこから新たな問題解決の道を探ろうという動きがいたるところで起こっています。例えば、2008年に起こったリーマンショックはまだ記憶に新しいところですが、あの事件以後再び1930年代の大不況期に焦点をあてた研究が活発になっています。またごく最近ではアメリカでトランプ政権の誕生以来、彼の打ち出す移民制限措置や保護主義的政策等々が物議を醸していますが、これに即応してアメリカの移民政策を再び捉え直す動きが起こっていますし、また1930年代各国が採った保護主義がどのような結末を迎えたのか改めて問い直す気運も高まっています。

我田引水の感はぬぐえないのですが、こうしてみると経済史も古色蒼然とした時代遅れの学問とばかりは言えないように思えます。いささか使い古された感はありますが、かのビスマルクが「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」という箴言を残しています。混迷し先行きの見通しが立たない時代であればこそ、もう一度歴史に立ち返って来し方を熟考してみるのも直面している問題解決の良き方法ではないかと思います。経済史はその意味で依然生彩を放っている最先端の学問であると私は思っています。学生達に経済史の面白さを伝えることができたら幸いです。