学部長・学科長メッセージ

産業社会学科 学科長 西山 賢一


私たちと一緒に「現場」に入り、現実が提起する課題と格闘してみませんか?

私たち産業社会学科は、学生一人一人が生き生きとした現実感覚を持って、経済学に挑んでくれるようになることを重視し、様々な「現場」へと入って学ぶ「フィールドワーク科目」を大切にしています。産業社会学科では、卒業までに、経済学科の倍の「フィールドワーク科目」単位(=科目数)を受講しなければならない、ということになっています。このことを最初は負担に感じるかもしれませんが、これが私たち学科の最大のアピールポイントとなっています。

「戦略的転換点(Strategic inflection point)」という言葉があります。この言葉は、インテルの創業者の一人、アンディ・グローブがその著書『パラノイアだけが生き残る』(日経BP社、2017年) (原著発刊は1996年)で取り上げたことによって、その後、様々なところで使われるようになりました。「戦略的転換点」というのは、従来の競争環境を根底から覆すような「転換点」のことを指しています。

「戦略的転換点」を理解する例としてiPhoneをあげてみましょう。iPhoneの登場によって、それまでの日本製の携帯機種は「ガラケー(=ガラパゴス化したケータイ)」と呼ばれるようになりました。私たちの社会と生活を一変させ、従来の競争環境を一変させたiPhoneの登場が「戦略的転換点」だったのです。グローブは、このような「転換点」にいち早く気づけるように、「パラノイア(超心配性)」になることの重要性を教えています。

皆さんは、現在の「戦略的転換点」に気づけているでしょうか。私は、現在の「戦略的転換点」は三つあると考えています。一つ目が、「脱炭素革命」であり、二つ目が、「ブロックチェーン革命」であり、最後の一つが「人工知能(=AI)革命」です。もちろん、このように言うことに異論もあるでしょうが、ここでは、一つ目の「転換点」である「脱炭素革命」について、少し見ておきましょう。

「脱炭素革命」は、昨年末のNHKスペシャル『激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃』とNHKドキュメンタリーシリーズ『脱炭素革命』1〜3で、取り上げられ、今年に入って、中日新聞(『中日新聞』社説、2018年1月9日)でも、取り上げられましたので、いずれかをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。中日新聞社説の中に、次のようなショッキングな一文があります。

「日本政府は、高効率の石炭火力発電所の輸出による“貢献”をアピールし、世界から非難と言うより、嘲笑を浴びました。」(『中日新聞』社説、2018年1月9日)

日本政府は、従来よりも大幅にCO2削減効果のある石炭火力発電所をアピールして、「嘲笑」を受けたわけです。今や「低炭素」ではダメ、となったのです。私たちは、2015年のパリ協定が「脱炭素革命」の烽火を上げた「戦略的転換点」だったことに気づけているでしょうか。

私たちは今まさに、歴史の転換点に立っています。このような時代だからこそ、「戦略的転換点」のシグナルに敏感に反応できるような「パラノイア」にならなければならないのです。私たち産業社会学科は、グローブの言うところの「パラノイア」になるための方法論の一つとして、「現場」にしっかりと足を下ろして、地域にある資源を大事にしながら、現実と格闘することのできる、「フィールドワーク科目」の受講がきわめて重要だと考えています。もちろん、「フィールドワーク科目」の中に、「脱炭素革命」の「現場」に入っていくものも用意しています。

産業社会学科で、私たちと一緒に様々な「現場」に入り、現実が提起する問題と格闘しながら、新しい経済学を学び、未来へと足を踏み出してみませんか?