経済学部ニュース

●2021年4月1日 オンライン講演会
ハビタットひろば「自らの生活を取り戻す: イラクにおける復興・平和構築支援」受講報告

ハビタットひろば「自らの生活を取り戻す: イラクにおける復興・平和構築支援」
左: 当地の方々の「未来」への力強い歩み
右: 国連ハビタットイラク事務所 プログラム・マネージャー 寺岡亮輔氏


2021年4月1日、国連ハビタット(UN-HABITAT)・福岡県国際交流センター主催のオンライン講演会に参加しました。国連ハビタットでは、近年、イスラミック・ステートとの戦いに起因する国内避難民や被災都市を支援するプログラムを展開されています。今回は、国連ハビタットイラク事務所にて本事業を主導されているプログラム・マネージャー 寺岡亮輔氏より、その復興・平和構築支援の概要をうかがいました。

■戦闘で破壊し尽くされたまちの復興においても、「だれも置き去りにしない」支援


成瀬瑠里子 (経済学科3年)

 

ハビタットひろばにて、ご講演テーマとして「イラクを取り上げるのは、初めて」とのこと。国連ハビタットイラク事務所の寺岡亮輔氏は、これまでに、インドのNGO、青年海外協力隊、国連世界食糧計画(WFP)などで、孤児や青少年、学校給食に関わる諸事業に当たられ、2020年12月に現在の要職に就かれたそうです。現地の不安定な通信状況を気遣いながら、「社会的、環境的に持続可能なまちや都市づくり」の推進というハビタットの使命から、分かりやすくお話しくださいました。

イラクは、人口が約3千万人以上、イスラム教徒(シーア派)が多数を占める国家です。戦争が長く続き、1980年代にはイラン・イラク戦争、1990年代初頭には湾岸戦争、21世紀の幕が開くとイラク戦争、そして近年は過激派組織イスラミック・ステートとの戦いがありました。ご講演では、激しい戦闘で破壊された市街地や銃弾を浴びた門扉のスライドを拝見し、「開発」はもとより「復旧・復興」さえも大変困難で、途方もない作業であることを痛感しました。続いて、寺岡氏は、今にも崩壊しそうな建物の前の歩道に急場しのぎの屋根をかけ、商店を営む地域住民の写真も見せてくださいました。こうした厳しい環境にあっても、当地の方々の「未来」への力強い歩みは、確かに始まっています。

イラク事務所は、1996年に事業を開始。イラク戦争以降は、早期復興支援-特に、避難施設等の提供、住居の修復等を通じた国内避難民への支援-に注力されてきたそうです。また、現在は、イスラミック・ステートとの戦いで破壊されたまちを復興し、避難生活を送る人々の帰還をはかるなど、イラクにおける平和構築に力を尽くされています。具体的には、「低価格住宅の建設」、「住宅およびインフラの修復」、「職業訓練(住宅建設・修復)、生計支援・雇用促進」、「土地権利確定の支援」の4つがプログラムの柱となっています。この取り組みにおいては、女性世帯主や障害者とされる方々への支援も進められていました。今後は、水・衛生設備の修復をはかりながら、新型コロナウイルス感染症予防に関する啓蒙活動も展開されるそうです。

ご講演のなかで、最も深く心に感じたことは、戦闘で破壊し尽くされたまちの復興においても、「だれも置き去りにしない」支援をめざすという方向性でした。そこでは、細かいところまでデータ集計を行い、各国政府、国際機関、市民社会組織などを含む、広範なステークホルダーとの協議をもとに、各種の基準、優先順位、さらには配慮すべき事項を決めていくプロセスが大切にされています。私たちの身のまわりでの施策形成においても、こうした視点を、改めて確かめてみたいと思いました。



【大学ウェブサイト 関連リンク】
名城大学 学びのコミュニティ(2020年度)
E=mc2 for SDGs(Empowerment = movie×creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs)のための人づくり



(担当: 谷村光浩)